【肥後遊記】第十三譚 『肥後のふしぎなもん』 大木に藁綱を、巻いて巻いて、7回半! 合戦峰天子の神事(山江村)
熊本県山江村の「合戦峰天子の神事」を深掘り!地元で受け継がれる神秘的な儀式や、独自のお供え物、そしてその歴史の魅力を解説します。熊本の文化をもっと知りたい方必見!
肥後(熊本)のふしぎなもんの仲間を求めて、津々浦々を旅している妖怪ひ~でございます。
今回は、12月の山江村合戦峰で行われる「合戦峰天子の神事(山江村指定無形民俗文化財)」を妖怪ひ~が紹介します!
合戦峰天子の神事の様子
はじめに
合戦峰天子の神事は、旧暦の11月21日に山江村合戦峰地区で行われるもので、地区内の天子山にあるタブの巨木に地区の人々が作った大繩を巻き付けるもので、その由来や起源等はあまりわかっていませんが、現在でも地元の人々によって継承されています。
この天子という地名は、第12代天皇である景行天皇(紀元前12年~紀元)が熊襲(古代の南部九州の地域名、あるいはその地域の居住者の族名)を討伐する際に駐在した場所の地名と伝えられており、山江村には合戦峰地区を含めて3個所あります。なお、球磨郡内にはその他にも十二か所の天子という地名があるとも言われています。
それでは、この神事を3つのトピックで紹介したいと思います!
天子という地名の説明看板
Topic1:神事に使う道具
この神事に使う道具(祭具(さいぐ))は、地区の山や田畑から採取した竹や葛等を用いて作り、釘や針金等の金具を一切使わないとのことです。
竹と葛で作られた神棚はしっかりしており、その後、お供え物をしっかりと載せていました。
また、写真をとった2022年の際には、早朝から大雪がふり高速道路が使えなくなるような天気でしたが、寒空のもと皆さんパワフルに作業を行われていました。
そのほか、近くの天子池に供える竹筒を作るのは長老の仕事だといい、元気に作られてもいました。
金具無しで作られた神棚とお供え物
Topic2:謎に包まれた7回半
この神事の一番の特徴は、約30メートル・重さ約20キロの大繩をタブの木に巻き付けることですが、なぜ7回半巻き付けるのかは地元でもその由来ははっきりとしておらず、先祖代々の伝統とのこと。
ただし、熊本市や菊池市、高森町等でも同様に7回半巻き付ける神事が残る地区はあるものの、その理由について不明であったり、様々な説があります。その中から、いくつかご紹介します。
説①
「シメ縄は「七五三縄」とも書くようにワラスボ(べ)をその数でなうからで、七、五、三という数字は子どもの宮参りなど、祝いに使われる目出度い数字にもとづくものである。」
説②
「菅原道真が九州に上陸の折、円座がなかったので舟のトモ綱を七巻半にして座られたから」
以上のように様々な説はあるものの、同じような文化が点在するのには、何かしらの理由があるかと思いますが、謎は深まるばかりです。
7回半巻いた後の神事の様子
Topic3:お供え物、粢(しとぎ)
この神事で作られる粢(餅の古い名称で、水に浸した生米をつき砕いて、米粉にし水を加えて丸めたもの)は、昔は天子池と呼ばれる場所の水を使い作っていたという。
これは天子池で、景行天皇が休憩を取っている際に米粉の餅を食べたことに由来するとも伝わっていますが、先ほどの綱と同時に先祖代々の伝統とのことで詳しくは知らないとの事でした。
この粢を実際に食べてみましたが、味は素材のお米の味がするもので、現代では物足りなさを感じるものですが、米が貴重な時代では大変なご馳走だったでしょう。
粢
天子池の湧水地
天子池
【NEXT】
第拾四譚 『肥後のふしぎなもん』郷土玩具界、西の横綱「キジ馬」(人吉市)を紹介します!
お・ま・け
ちなみに・・・
2022年に合戦峰天子の神事は、この国の事業で映像記録がなされており、YouTubeやサイトで見ることができますので、是非チェックしてください!
また、山江村には山江村歴史民俗資料館もあり、地域の歴史を学べるほか、様々な企画展を楽しむことができます。
そのほか、美味しいご飯が楽しめる旧山江村役場庁舎(昭和12年建設。国登録有形文化財)を利用した「時代(とき)の駅むらやくば」や、温泉が楽しめる山江温泉、人吉球磨郡で最も古い寺院の高寺院等が近くにありますので、人吉球磨に観光に行く際は、立ち寄ってみませんか?
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