第九回 湯前まんが美術館で風刺漫画の魅力を感じてきた
共感、時にはクスッと、一枚の画で時代を表現する風刺漫画。ここなら考えさせられる一枚にあなたも出逢えるかもしれません。風刺漫画の魅力を体感できる湯前まんが美術館をご紹介。
オルターのあめくまです。
皆さん、風刺漫画と聞いたら何を思い浮かべますか?歴史の教科書にも出てきたジョルジュ・ビゴーの「魚釣り遊び」は風刺漫画としてとても有名です。この画は日清戦争の始まりを魚釣りで表現しています。見たことがある人も多いのではないでしょうか。
そもそも風刺とは、主に社会や政治の欠点を批判し嘲笑的に表現することで、それを漫画で表現しているのが風刺漫画です。
熊本が育んだ政治風刺漫画家 那須良輔
今回はそんな風刺漫画を生涯書き続けた漫画家「那須良輔」の記念館、「湯前まんが美術館」をご紹介したいと思います。
那須良輔先生は、熊本県球磨郡湯前町で育ち、画家を目指して上京。「内職」のつもりで書いた漫画が採用され、戦争や政治に対する怒りと優れた画力で戦中、戦後の政治や社会を痛烈に風刺した一方、自然などを題材とした随筆や風景画などを多く残され、文化人としても広く知られています。
湯前まんが美術館は「まんが」をテーマとした美術館で、那須良輔氏の残した作品を保存・展示する館として平成4年に開館されました。那須先生の作品は約7000点ほど収蔵されています。
また、当館では、那須良輔風刺漫画大賞というコンクールを開催しており、毎年全国からプロ・アマ問わず500以上の作品が集まります。また、海外からの応募もあるようです。
湯前まんが美術館へ
当館の場所は熊本県南部の球磨郡湯前町にあります。熊本市内からだと、車で行くのがおすすめです。湯前には美術館のほかにも温泉や神社などの観光地もありますし、人吉も近いので夏目友人帳の聖地も巡れます。以前、夏目友人帳と熊本県がコラボした動画に登場する場所を巡った記事を書いています。そちらもぜひ、ご覧ください。
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九州自動車道を南下し、人吉ICで降りたあとは国道219号を東に向かうと湯前町に着きます。まんが美術館はだいたい町の中心にあります。
美術館手前の道に案内看板があります。ちょうど桜がきれいに咲いていました。
湯前まんが美術館に到着!特徴的な外観をしていますね。
中に入ると正面にカウンターがあり、その横に券売機があります。
高校生以上は300円、小・中学生は100円、開館時間は午前9時半から午後5時までとなっています。
漫画好きににはたまらない!展示物に大興奮!
入口には、ポストカードやマンガ入門セットなどを販売してるミュージアムショップというコーナーがあります。
また、壁の至るところに有名漫画家さんのイラストが展示してあり、マンガ好きの私は興奮を隠しきれませんでした笑
館内には本棚があり、80年代から漫画家、イラストレーターとして活躍する江口寿史先生(水俣市出身)、発行部数5億部を超えギネス記録を更新した『ONE PIECE』の尾田栄一郎(熊本市出身)、『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットしている井上雄彦先生(熊本大学に在籍)など熊本県や美術館にゆかりのある漫画家の作品を読むこともできます。
個人的には子供の頃何度も読んでいたうすた京介先生(熊本県立大津高等学校出身)のマサルさん(『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』)が置いてあり、おもわず手にとって読んでました。
ソファーなどに座ってゆっくりと漫画を読むことができるなんて、本当にすばらしい美術館です
漫画で感じる歴史
カウンターから右奥に進むと、那須良輔風刺漫画大賞の受賞作品を展示してあるエリアがありました。
那須良輔風刺漫画大賞は平成4年から年に1回開催され、31回開催されている歴史ある賞です。
これらは過去に大賞を受賞した作品です。風刺マンガを見ると、その当時に国内で話題になった事件や問題を視覚的に知ることができますね。しかも絵が印象的だと、より深く記憶に残る気がします。
東日本大震災や熊本地震、そして新型コロナをテーマにしている作品です。今でこそ規制が緩くなった新型コロナですが、少し前まではいつになったらマスクを外して生活できるようになるのかわからず、まさにこの画のように出口の見えない状態でした。
私が一番面白いと思った作品です。実際に居酒屋さんとかでこういうビール見たことあるー!って思いました笑
まぁ値段すえおきだとお店側もキツイですからね。他にも面白くて記憶に残る作品がたくさんありました。実際に来て閲覧してみることをおすすめします。
※風刺漫画大賞受賞作品展は、2023年4月9日で閉幕し、4月15日より新しい特別展・常設展が開幕。6月11日まで特別展示室にて「那須良輔生誕110周年記念『わが酒中交遊記』展」が開催中。
風刺漫画にとどまらない那須良輔先生の魅力を感じられる展示です。
貴重な漫画誌を手に取って
階段で2階に上がると畳の間があります。2階は、月毎のワークショップ開催日に開放されます。
ここでは自由に座って本棚に置いてあるマンガ等を読むことができます。
本棚には新しめのコミックから、ものすごく古い少年雑誌まで多くの漫画が並んでいました。
この「少年倶楽部」というマンガは昭和初期に刊行されたもので超年代物ですが、かなり綺麗な状態で保管されていました。当時の子供たちはこういった雑誌を読んで楽しんでいたんですね。
那須先生を知る
このエリアでは、那須良輔さんについて紹介しているビデオを視聴することができます。
那須良輔さんが使用されていた書斎が再現されています。
また、那須良輔さんの生涯を漫画にした「風を描く人」という作品が当館の中でのみ読むことができます。(2023年4月3日より、美術館のミュージアムショップで冊数限定で販売開始)
入口付近においてあったので全部読みました。湯前で生まれ、画家を志し上京、戦争等も経験しそれをきっかけに風刺マンガ家となる波乱万丈な那須先生の人生が細かく、そしてリアルに描いてありました。とても読み応えがあり面白い作品なので当館を訪れた際は是非読んでみてください。
風刺漫画は”おもしろい”
湯前まんが美術館、いかがだったでしょうか。
私は正直、いままで風刺マンガというものをあまり見たことがなかったので、いまいちどういう物なのかピンときてなかったんですが、当館に訪れて風刺漫画大賞の受賞作品を閲覧したとき、なるほど、これは面白い!と感銘を受けました。
同じテーマについての作品でも、描く人の年齢などで内容がまったく異なっていたり、またそれを一枚の画で表現するという難しさと面白さ、そしてそれを見る側の感受性の違いで色んな解釈が出来る、様々な要素が風刺マンガというものには含まれていて、とても奥が深い印象を受けました。
是非みなさんも一度足を運んでみてはいかがでしょうか。きっと新しい発見がありますよ。
では、また次回の記事でお会いしましょう。
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