南阿蘇村の震災復興の経験をつなげたい! 「地域とともに一歩ずつ」と語る、北里かおりさん
「もしも」の災害は、特別な準備だけでなく、“いつも”の暮らしの延長線上で備えることが大切です。 8月10日(日)、『無印良品 COCOSA熊本下通店』で、熊本地震のリアルな経験から「くらしの備えと共助のかたち」を学ぶトークイベントが開催されます。登壇するのは、震源地・南阿蘇村で被災し、今もその教訓を伝え続ける北里かおりさん。 地震から9年が経つ今だからこそ知っておきたい、いのちと暮らしを守るヒントがここにあります。

ふるさと南阿蘇村で長年、地域づくり活動をして来られた北里かおりさん。
熊本地震後は、ボランティアの拠点運営や村の被災集落支援にも関わった経験から、2025年9月には、『ぼうさいこくたい2025in新潟』のトークイベントにも登壇されます。
「ぼうさいこくたい(正式名称:防災推進国民大会)」とは、2016年の熊本地震の年から内閣府等が主催している日本最大級の防災イベントです。
「地域とともに一歩ずつ」とよく口にする彼女。2年前、同村の旧東海大学農学部グラウンド跡地にオープンした『熊本地震 震災ミュージアムKIOKU』でも、語り部ガイドの活動をされることがあります。
そんな北里さんは、8月10日(土)『無印良品COCOSA熊本下通店』にて開催される「南阿蘇から学ぶいつものもしも展~熊本地震から学ぶ くらしの備えと共助のかたち」でのトークイベントにも出演されるんですよ。
無印良品では、2011年、東日本大震災の年から「いつものもしも展」を展開しておられ、日常的に使い慣れた“いつもの”ものを活用して“もしも”の災害に備えるための、様々なプログラムを実施されています。
2025年8月10日(日)まで、『無印良品COCOSA熊本下通店』にて、下の写真のように布の巨大ポスターが展示されています。
被災者の思いを写真と言葉に込めて
その布の巨大ポスターは、かつて南阿蘇村の『震災伝承館 轍(わだち)』に、「学生村からのメッセージ」として展示してあった作品です。
私も『轍』を訪れましたが、そこは熊本地震の4年前、2012年までは村立長陽西部小学校として子どもたちの明るい声が響いていた場所だそうです。
旧西部小は、「崩落した阿蘇大橋に近い熊本地震の発災直後は一時避難場所となり、支援物資の保管や地区の公民館の役割も果たしました」と北里さん。
避難された方の中には同小卒業生の方もおられたのではではないでしょうか。一時避難場所として利用することになるとは思ってもみなかったことでしょう。
その後、校舎は『轍』となりましたが、2024年4月には老朽化のため解体が始まりました。
熊本地震当時の2016年、南阿蘇村の東海大学阿蘇キャンパス周辺の黒川地区には、800人ほどの学生さんが下宿し、「学生村」と呼ばれていました。
地震によって、学生さんも地元の人々も大きく生活や価値観が変わりました。その被災者の心の叫びをすくい上げ、言葉と写真で巨大ポスターに定着させ残す役割だったのが、北里かおりさんなのです。
8月10日(日)の無印良品のトークイベントで、北里さんと共に出演される橋村さくらさんは、当時は東海大学生でした。その橋村さんのつなぐ想いも、巨大ポスター「あたりまえじゃなかった」に載っています。
※スケジュール・予約サイトは最後にあります。
地震後に、支援員として活動
北里さんは、もともと長陽村(現:南阿蘇村)のご出身です。
九州造形短期大学デザイン科を卒業し、様々な仕事を経験された後、1998年に地元で開窯されました。美しい南阿蘇村の自然や各国の植物・文化を感じて創作に活かす陶芸家でもあります。
また学生時代に音楽に関わられていたため、アーティストを南阿蘇村に呼んでコンサートなどの主催もされています。
さらに震災前にアートイベントや「神楽の里をもりあげ隊」(~2018年)の立ち上げに関わり、地域の伝承文化「長野岩戸神楽」や地域の活性に尽力するなど、数々の地域づくり活動をして来られました。
そんな中で起きた熊本地震。
真夜中の1時25分に発生した本震で、ご自宅もアトリエも全壊してしまいます。暗闇の中、倒れた家具を乗り越えて、ご家族と共になんとか脱出したそうですが、数十メートル上には大規模な土石流が迫っていました。
隣家とは少し離れており、暗闇で何が起きたのかもわからず、車中避難されました。
しばらくして地元の消防団が「車が通れるように石などをどけました。明るくなったらグラウンドへ」と、声をかけてくれました。
阿蘇大橋の崩落さえも、県外からの友人からの情報ではじめて知ったそうです。
住むところを失い、先行きもわからない不安定な状況。しかし本震から約1週間後、全国から災害ボランティアが南阿蘇村に集まってきました。
阪神・淡路大震災を経験されたボランティア・コーディネイターの方は、多くの災害現場を支援されていましたが、南阿蘇村は初めてです。ボランティアの拠点を知人から借りた北里さんは、「県外から支援に来てくださっているのに、自分にできることは何かないか」と考え、支援センターの事務局で活動を始めます。
さらに村では、被害の大きい6地区が関わる『復興むらづくり協議会』を立ち上げました。
翌年2017年4月からは、北里さんは地震の被災地の集落支援員の役目を引き受けることになったのです。
自身も被災者でありながら、いえ被災者であるからこそ、同じ村に住む被災者に寄り添い、きめ細やかな心配りもできたのでしょう。
また南阿蘇村の現状を知ってもらうために、学生村だった黒川地区を歩く「黒川ウォーク」も企画し、参加者と歩いて案内します。
女性として復興に関わる姿は、2019年『熊本県男女共同参画通信ならんで』の特集「女性と復興」でも取り上げられました。
生まれ育った地域とともに一歩ずつ、被災地の実情を届けたい……。「予算をおさえて、学生・住民と知恵をしぼってやったこと」の一つが、今回、展示される布のポスターなのです。
新築されたアトリエには、益城の保育園の子どもたちも卒園制作に来てくれ、北里さんの愛猫が迎えてくれます。
地震から9年がたち、今だからこそ言えることもある……。そんな被災者も多くいらっしゃるでしょう。同じ村でも、被害が大きい地域と比較的小さかった地域の温度差も残ります。
そんな地域に根ざした活動を続けておられる、北里かおりさんです。
『無印良品COCOSA熊本下通店』でのトークイベント
トークイベント当日はソファを移動して、広い空間が用意されます。
日時●8月9日(土)11:30~13:00
テーマ●命を守る【防災収納術】 家族を守る備え−無印良品でつくるマイ防災収納
講師●松永りえさん(防災収納コンサルタント)
予約はこちら
日時●8月10日(日)11:30~13:00
テーマ●地域と学生が織りなした共助コミュニティ
講師●橋村さくらさん(阿蘇の灯 初代代表)・北里かおりさん(元集落支援員、地域づくり事務局)
予約はこちら
各回20席で予約制ですが、あの広い『無印良品COCOSA熊本下通店』ですから、立ち見もOKです!
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