キムタク主演のドラマに出たパリ三ツ星のランブロワジー。その料理長・吉冨×ターレ山本×Know鍬本、激レア・トークセッション
「熊本出身」の注目すべき料理人3名。キムタク本人に読んで感想もらいたい【グランメゾン★熊本】な熱き美食の未来談義、おると独占!
今旬で注目の人にフォーカスする「ALT_PEOPLES オルトーク」。テーマは『熊本サン・セバスチャン美味求真。』
美味しいものには目がない、おると編集長・ツネが食旅を続けてて出会った3人のシェフ。
共通項は、全員が「熊本出身」であること。そして、全員が「食を愛している」こと。
年齢も、場所も、立場も、違う3人を集め対談するキッカケとなったのは、以前おるとインタビューでも掲載した元ケルンよしもとで現『洋食屋ターレ』オーナーシェフ・山本氏との会話からでした。
>>>その中で、世界が誇る注目すべき若手シェフとして、最初に名前が上がったのがランブロワジー・吉冨 力良 氏だ。
©James HUTH
「L’AMBROISIE(ランブロワジー)」
説明無用の世界トップクラスにして名店中の名店、フランス・パリ4区、ヴォージュ広場に面する三ツ星レストラン。
オーナーは、かの有名な、ベルナール・パコー氏だ。 ※名言などインタビューはコチラ
ここを三ツ星レストラン、と簡単に表現するには恐れ多い。なぜならば、それはただの三ツ星じゃなく、長年に渡って三ツ星を獲得し続けている、三ツ星の中の三ツ星だから。
そう、もはや殿堂入りと言っても過言ではなく、間違いなく、人生で一度は足を運ぶべきレストランなのである。
そんな世界トップのレストランを司る料理長こそ、吉冨 力良 氏。 熊本・甲佐町出身。
考えてほしい。 あの花の都・パリのステージで、日本人では珍しい超名門の料理長まで上り詰め、世界中のフーディーたちを熱狂させている人物が、熊本人なのだ。また、フランスで2017年に行われた「パテ・アンクルート世界大会」では世界一になった実力派。熊本人のあなたなら、これ聞いてゾクゾクしませんか? 私は少なからず、震えました。
もう少しランブロワジーを補足すると、キムタクのドラマの店。
木村拓哉 さん主演ドラマ「グランメゾン東京」のロケ地。実際に実在する店として、キムタクの役・尾花夏樹(主人公)が昔、働いていたという設定でドラマにも実名で出ていたことでも有名。ドラマを見ていた人なら思い出してほしい。
ランブロワジーで面接をドキドキしながら受けていた早見倫子(鈴木京香さん)。彼女が人生をかけてフランス・パリに料理人として臨んでいるシーンで、尾花と出会う。そこをキッカケに、ミシュランの星付きレストランを目指していく・・・
ほんと、良いドラマでした。続編が見たい!
また噂では、キムタク主人公のモデルのようになったとさえ言われている吉冨氏(インタビュー中、本人は否定していましたが)。しかし間違いなく彼がいたから、このドラマの撮影が実現した。キムタクたちをアテンドもしたそう。 ※Yahoo!ニュースはコチラ
一方、熊本で、
ローカルに深く根差し、料理道を突っ走る2人、山本 一哉 氏と、鍬本 峻 氏。
中でもブッチギリ、注目の若手シェフ、
新進気鋭の若手料理人・鍬本 峻(クワモト・シュン)
知らない人は絶対に、彼の名を、覚えておいた方がいいかもしれない。 @shun__.k
シャワー通りにて、『.K(ケイ)』という取材拒否・一元さんお断り、看板もない隠れ家の店を立ち上げ、その後、業態変更して『切符』となって再始動。
熊本を中心に、全国からウワサを聞きつけ、足繫く通うフードマニアが多かった。が、そこも突如閉店。
そして、沈黙を破り、
2021年7月、超イケてる古民家 美食の館『商工クラブ』内に、「Know restaurant」を立ち上げた。
※PV映像を作るトミーも、センス良すぎるから注目。サイトもcheck out
彼が作る奇想天外の料理は、表現が難しく、まさにジャンルレス。いや、むしろ、それこそ狙いで型にハマらず、理解不能な一皿を楽しむ客を前にして、さらに、あの手この手で喜ばせようと仕掛けてくるのがわかる。フュージョン・フレンチ?イタリアン?和食??だが、核の部分には常に「熊本愛」が脈々と流れているのは、熊本人として誇りに感じ、思わずニヤリとしてしまう。
誤解を恐れず言うと、彼のスタイルは、狂想曲のようなオルタナティブ料理。どこかかすかに匂うストリートで、パンクスな一皿。粗削りの中に、ヒリヒリとする美学。
県外客の皆さんへ。忠告!
熊本にわざわざ来たらオススメは、やっぱり、まずは馬刺しで「菅乃屋」さんに行って、からし蓮根なら「森からし蓮根」さんに行って、そして、「湯らっくす」のサウナでととのって、「いち葉」さんとかでサ飯して、球磨焼酎や日本酒いって、花の香酒造の神田社長の顔思い出したり、元 澤屋まつもとの松本日出彦さんとのコラボの一本や、秋山具義さんデザインの純米大吟醸スパークリング泡酒「花火」を嗜んで・・・。次の日は阿蘇に行って、天草行って、藤川さんのリゾラテラスで塩パン食って、ももクロも推すめちゃウマの塩海苔はマストで買って、奴寿司の大将の笑顔みて。と、絶対ハズさない熊本観光ゴールデン・ルートの中に、間違いなく「Know restaurant」を入れとかないと後悔します。
ということで、吉冨氏がパリから一時帰国して帰省していた7月、丸菱のIさんが繋いでくれて(感謝です涙)、「Know restaurant」を会場として美食対談。予定していた45分を大幅に延長に延長を繰り返し、終了したのは1時間50分(汗)。
一言、濃すぎた!
■山本シェフ、以下【山】
料理人同志として、共通してあることだと思うんですが、心の奥底に「ふるさとを愛する気持ち」が脈々と流れていることかと。少なからず、料理を志した人の根底には必ずあると思んですよ。しかし、料理のレベルが高ければ高い人ほど、また全国、世界へ出た料理人が、熊本に戻ってお店を出すには難しい土地だと思うんです。
それは、熊本の資産として、非常にもったいない。こういう若者2人を前にすると、常々、感じます。
長年、熊本で料理人やっている1人としては、その雰囲気を変えて、熊本の食の全体的な底上げにつながればいいなと思っているんですよ。例えば、行政や財界に声をかけて、一定レベルのシェフには事業の資金や家賃その他いろいろな支援をしてあげるとか。熊本で安心してお店を出せる仕組み作りが、いま必要だと思う。
吉冨さんたちでも帰ってこれるような場所。吉冨さんたちのようなパリでバリバリやっているシェフが増えていくと社会が変わり、熊本を変える一助ができないかなぁって。そんな思い描きながら早速、トークセッションをしていきましょう。
デスティネーション・レストランとして熊本の魅力
【おると編集長、以下、お】
「デスティネーション・レストラン」というワードも広がってきて、一方で、コロナになって海外に行けなくなったからこそ国内に目が向いているのはチャンスだと思っているんです。例えば長崎・島原にある「ペシコ」さんたちのように、ローカルでアクセスが悪いところでも、全国から客が来るような、わざわざ行く価値がある若手のレストランも増え始めている。観光の視点に食が強く加わってきている今、料理人としての10年後、20年後のビジョンはどのようなものをお持ちですか?
【山】
私が一番、歳を食ってますんでね(苦笑)。先日オープンさせた『ターレ』を、自分のペースで維持していくことですかねぇ。前職のケルンよしもと時代のように、できるだけレベルをあげよう、あげようという視点ではなく。熊本の人たちに、ゆっくり愛されていくお店づくり、それと、私が媒介になって、料理と人が繋がっていったり。
【Know鍬本峻、以下、鍬】
僕は5年前シャワー通りで『.K』を始めて。正直、将来の野望みたいなビジョンはあまり見えていなかったですね。
よく県外の方とかに「熊本に何があるっけ?」て質問されたら、決まって答えは「馬刺しや赤牛、郷土料理」の料理ジャンルだったりします。ある一定のお店の名前が上がってくることって、少ないなと思ってて。・・・熊本にはこんなにも美味しい名店があるのに、それが、とても悔しい。だからこそ、今後も熊本でずっとやっていくという意志は強くありますね。自分だけ有名になるとかじゃなく、少しでも熊本のレストランや生産者、食材の名前を全国に広めていきたい。それがしいては、熊本の方々にとって誇りになっていくような。そういうビジョンは今あります。
【ランブロワジー・吉冨、以下、吉】
熊本には、いつかは帰ってきたいという想いはありますよ。甲佐町には実家も、田んぼもありますから。いつかは戻れる場所があることはいいことです。しかし、今すぐには帰れない。まだ料理の世界でやるべきことがあるから。
実は、若い頃、ケルンよしもとさんも行ってましたし、お金がないなりに食べ歩いて勉強させて頂きました。また19歳の時に料理の仕事を探しはじめて、『赤煉瓦』さんのところでお世話になりました。震災で実家が被災した時もたくさんの人に助けられたりして、熊本には恩があります。そういう意味でも、将来、何かしら恩返しをしたい気持ちが強いですね。
カリスマとは何か? 一流の師匠は◎◎を持つ
【お】
料理の世界は厳しいと聞きます。そんな中で生き抜くには自分の確固たる哲学が必要だと思いますがいかがですか?
【吉】
フランスや日本でいろいろなお店で働きましたが、振り返ると、皆さん惹きつけるものを個々持たれてます。ベースはそんな変わらないですが、ランブロワジーを率いるベルナール・パコーさんは、何が違うか?それは「人間性」です。
一般的にカリスマ、て言われる人ってイケイケなイメージありませんか? 実際にイケイケな店には、イケイケなオーナーが多いですし。カリスマとは、海賊で例えると、船長が「おい!みんな、次はあの〇〇島を攻めるぞぉーー!!いいかよく聞け、黙ってついてこい!いくぞ!!」みたいな、みんなを引っ張っていくスタイルの人だと思っていました。
今まで務めてきた店でも料理をやっていて「なぜ、そんなことやってんだ!」なんて言われた経験も多いです。
しかし、ランブロワジーは全然違った。「いいね、この盛り付け!」だったり、「うんうん、このソースとても美味しいよ!」といった、みんなを気持ちよく乗せていくスタイルなんです。
みんなが働きやすい環境を作る。お客様のこと、従業員のこと、家族のこと、業者のこと、とにかくみんなのことを一番気遣っている方。
船で例えると、いくぞーー!!という舵きっていく船長ではなく、ずっと細かい部分に油をさしたり、機関室にこもって手入れしたり・・・。問題なく、スムーズに船が進むように、いつも手入れをしている人というか。ベルナール・パコーさんは、オーナーシェフであるにも関わらず、自分が休みの日でも掃除をしにお店にきたり、壊れた箇所を修理したりしている。そういったところが、まるで船の機関室にいるような人で。カリスマシェフなのに、陰に徹し、縁の下の力持ちのような存在。今まで、こんな人に出会ったことないですよ。
だから、その考え方はパコーさんから学んできた。料理が完璧とか、テクニカルだとかそういうのではなく、人間としての考え方を教えてくれるところがランブロワジーです。
野球で言うならば現代的ID野球ではなく、ベルナール・パコーさんは間違いなく長嶋茂雄流の野球のやり方です(笑)。
【山 】
僕の師匠も、熊本で一番というくらい怖い方でしたが(苦笑)、とにかく哲学もあって学びが多かったですね(現、高森町にあるレストランキムラの木村オーナー)。武勇伝だらけの師匠です。どんなこと言われても、絶対に勝てない部分があるから、付いていくみたいなね。それは今なおありますよ。
【鍬】
19歳くらいの時に、本場ピザ職人になる!と決めて、あてもなくイタリアへ行ったのがスタートで。それから振り返ると、いろんなパターンの天才がいる業界だと思ってます。三ツ星のシェフが正解とか、星持っている人が偉いというわけではないですし。でも、オリジナルの考えを自己で持って、それぞれの場所で働いて、会って、吸収して・・・。
その繰り返しこそが、「師」だと思う。
僕は今、誰からも教えてもらえる状況ではないので、我流の感覚というものを徹底的に考えていきたい。料理雑誌とか読むと、いろんな天才の情報が目に飛び込んでくるんで、今、見ないようにしてますもん(苦笑)。師匠という存在はいないので、このような機会で素晴らしいお二人のお話しをうかがって、純粋に凄いなぁと思いますね。僕は才能が全くないので、まずは自分なりのやり方で、「熊本=鍬本 峻」というポジションを確立できたらと思っています。
「グランメゾン東京」のキムタクとの秘話、影響力とは?
【吉】
ドラマをすると聞いて、取材班からは「ランブロワジー」のようなレストランで撮影したいという話を聞いてて。基本今まで、パコーさんはメディアやジャーナリストを断るんです。しかし、今回は、日本のミシュランから協力してほしいと相談があったそうで、OKしたと聞きました。だから、ドラマでの露出は初めてだったんです。日本人は私だけなので、木村さんなどアテンドする中で、お話する機会もあって。良くして頂いたのは嬉しかったです。
【山】
おぁ~~。普段あまりドラマを観ないんだけど、「グランメゾン東京」は観ましたね~。キムタクの役こそ、吉冨さんのリアルな実体験のように見えて嬉しかったですよ。ドラマの脚本も面白かったし、続編はあってほしいドラマですね。料理人て、目の前の人から、直ですぐ反応をもらえる仕事の数少ない業種だと思うんですよ。そういう意味でシンプルであり、だから、辞められない。けど、そこに至るまでの過程が大変だから、小学校の頃に「将来の夢はシェフになりたい!」という人は多いけど、いずれはならない職業になっているのが悲しい。だから、小山薫堂さんが手掛けた番組『料理の鉄人』だったり、『グランメゾン東京』によって、業界が盛り上がるキッカケを頂いていることは素晴らしいことです。
料理人の使命、そして熊本サン・セバスチャン化計画
【吉】
昔、調理師専門学校で読んだシェフ本の一文が今なお強烈に印象的で。
「ここでやっているから凄い!のではない。どこにいたかが問題ではなく、そこで何をしたかが重要だ」という重い言葉があって、まさしく、三ツ星にいるから凄いわけじゃないんです。僕は「パテ・アンクルートの吉冨さん」とか、「ランブロワジーの吉冨さん」という風に見られるのは、逆に苦悩なんです。だから、名刺に肩書は書いてない。これからも周りに惑わされず、個人の力で勝負したい。
【山】
今回、このようなキッカケで対談できたことは、よい気づきを頂きました。また吉冨さんが、熊本を1つのゴールに考えて頂いているのは非常に嬉しく興奮しましたよ。熊本の人って、異常に熊本大好きな人が多いと思うんです。このように、食を通じていい形で【熊本×食×観光】の繋がりを作っていったり、頑張って機会創出できる立場になれたら幸せです。
僕は冗談半分で、けど本気で昔から語っているのが『熊本サン・セバスチャン化計画』。
スペインのサン・セバスチャンは、そこに美味しいものがあるから、世界中から観光客が訪れますよね。けどね、熊本も食材や土地の力は負けてないと思ってます。だからこそ、吉冨さんや鍬本さんたちのような若手の熊本出身のシェフを呼び戻せるような環境を整えていくことこそ、熊本観光の底力になりえる。『人がいれば、人が来る』。
僕は、もはや自分が何かをしたいというより、そのような頑張られている方たちを支えることこそが自己実現というのかな、それが一番。それこそ、料理人としての最後のプライドで、終活ですよ(苦笑)。