【“かねだの黒棒”の正体とは!?】60年のロングセラー、フワッフワの謎に迫る。季節限定いちご棒も新登場!
【新春スペシャル、名物を追え!】職人・兼田親子に聞いた、手練りの材料を焼き上げるからこその、ふわふわ感。いちご棒や最中あいすも生み出した、60年愛される「かねだの黒棒」開発者インタビュー。
「かねだの黒棒」は、60年のロングセラー!
8本も入って378円(税込)というお手頃価格。
「やわらかくて、すごく美味しいよね~」と世間の評判はもちろん有名。だけど、実は私、避け続けてきたんです。
なぜかって?
・・・黒糖のお菓子を見ると、黒糖大好きだった亡き祖母を思い出して、心が痛いから。
と言いながらも、ずっと気になる存在だった「かねだの黒棒」。
食べたい、いや、辛い。いやいや、食べてみたい、うーん。
そんな気持ちがゆらぐ365日を過ごしていたら(苦笑)。なんと、救世主が目の前に現れたんです!
「黒棒最中あいす」
あぁ~。母方の祖母に黒糖のお菓子をもっと食べさせてあげたかったなぁ……と、涙がポロリと落ちそうなほど美味しいじゃん!
母にそっと、その気持ちを伝えて「かねだの黒棒」を渡すと、
「わー、美味しい(⋈◍>◡<◍)。✧♡ 私たちが味わえば、おばあちゃんも幸せよ!」※淡々とw
え?へぇ。だね(苦笑)
外は黒蜜がカリッとしているのに、
中はフワッフワ!
なぜ⁉
実はこれ、昭和12年(1937)生まれ、兼田覚(かねだ・あきら)さんの手練り!( ゚Д゚)
80代現役の和菓子職人に早速、秘密を聞きに行かなきゃ!
令和3年11月28日に再開した、くま川鉄道の終着駅・湯前駅。
その近くで、初代が兼田製菓舗を創業したのは、戦前の昭和10年(1935)だとか。
覚さんは若いころ、同じ球磨郡の和菓子店で修業していたのですが、
腕の良さを見込まれたのか、初代から兼田製菓舗に引き抜かれました。
婿養子となり、「奥球磨伝承 手仕事一貫 かねだの黒棒」を考案したのです。
かねだの黒棒の開発秘話、激白!
【おるたー・かのん】(以下、か)
「かねだの黒棒」を考案されたきっかけは?
【二代目・兼田覚さん】(以下、二)
……奥球磨ではよく食べられよったとですよ。
【か】作るうえでのご苦労は?
【二】……黒蜜の水加減が難しいですね。柔らかすぎず、堅すぎず。
寡黙な覚さんに代わって、インタビューは息子であり三代目でもある浩一郎さんにさせていただきました。
【か】黒棒の作り方を、こそっと教えていただけますか?
【三代目・兼田浩一郎さん】(以下、三)
小麦粉と卵を焼いた生地に、黒蜜をかけるだけ。九州は南部なので、黒砂糖が手に入りやすく、昭和20~30年代にかけて、甘いものの需要があったんでしょうね。
【か】一般的な黒棒って、もっと堅い食感なのに、「かねだの黒棒」は、なぜこんなにふわっふわなんですか?
【三】うちは材料を手で練っているので、機械では出せないふわふわ感が出るんですよ。
【三】特に、焼き方が一番重要なんです。高温でさっと焼かないと、堅くなってしまうから。ま、7~8分ってとこですね。
焼きあがった生地に黒蜜をかける職人たち。さっさっと手際がいい!
そのテンポの良さに見とれていたら、二代目が突然、オーブンの前に移動。
焼きあがった生地を取り出します。
【か】えっ、タイマーとかセットしなくて大丈夫ですか?
【三】体で覚えているんで……。何をしていても、そろそろだな、とわかるんです。
【か】さすが熟練の技!
【三】でも、黒棒以外はタイマーを使っています(笑)。ケーキ🍰やパイなど洋菓子も作るので、タイマーがないと大変(汗)。
【か】工場で大量生産するような黒棒は、平行四辺形ですが、「かねだの黒棒」は三角ですよね。
【三】店から見える市房山をイメージしているんですよ。
【か】熊本県第二の高さを誇る霊峰・市房山ですね。地元を離れた人にも、球磨郡の風景を思い出してもらえますね。60年間も売れ続けるって、すごいことです。
【三】帰省されたお客様などから、「懐かしい味! よくぞ、作り続けてくれました」と喜ばれます。
【か】ネット販売はしないんですか?
【三】1日に、8本入りを40パック製造するのが精いっぱいなんですよ。他のお菓子も作らなきゃいけないし。
黒棒から生まれた、新しい商品たちも!
【か】ちょっとした手土産には、2本入りの小袋が便利ですよね。
【三】15年くらい前、お客様から「洋風の焼き菓子などと色々詰め合わせて贈答品にしたい」と言われて、小袋が生まれました。
箱詰めできるから帰省土産などに買って行かれて。それを受け取ったお客様から問い合わせがあるなど、幅が広がりましたね。
【か】黒棒を作る過程で、どうしてもミミというか、端っこは切り落とされるんですか。
【三】はい、昔は捨てたり、お客様にプレゼントしたりしていました。しかし、「美味しいから売れば?」と言われ、蜜を付けて、ミミだけ袋に入れて販売するようになりました。
【か】おおっ、食べ物を無駄にしないSDGsの時代にぴったりじゃないですか。しかも甘味が凝縮して、コーヒーのお供にぴったり。この大きさ、何本でもイケますね。
【三】ミミは「一口サイズでちょうどいい」という意見も頂き、今、黒棒のサイズも検討中です。
父が苦労して、黒棒をここまで人気商品にしてくれました。僕は大学の商学部からお菓子メーカーに就職し、商売について学んだ……というか、いや全然、学びやせんかったですね(笑)。
【か】そして跡を継がれたんですね。奥様もパティシエだし、さらなる新商品が誕生するかもしれませんね!
【三】1月には、湯前町産の苺を使った「季節限定いちご棒」も作っています。
実は黒棒も、現代風に甘さを抑えるなど、少しずつ改良してきているんですよ。黒蜜も、黒糖ではなく赤糖を使って、深みを出していたり。
【か】えッ!? 赤糖? 黒糖だと思って祖母を思い出し、遠慮していた私は一体……(遠い目)。
覚さん・浩一郎さんが手作りする「かねだの黒棒」は、湯前駅前の物産館『湯ーとぴあ』でも販売しています。
ぜひ食べてみてくださいね。
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追記
読者から「黒棒を買いたい! 通信販売アリ⁉」と問合せがありました。
しかし「安価なので、送料の方が高くなって申し訳ない」と、発送はせず( ノД`)シクシク…
諦めかけたそのとき…熊本市内でも購入できる場所があるとの情報を入手!
その1:毎週木曜日第二、第四木曜日、熊本県庁新館・地下1階売店前
湯前町の下村婦人会が、お昼時に漬物やお弁当を販売されるのに合わせて、黒棒も約10パック置いてくれているそうです!
その2:毎週水曜日、熊日びぷれす広場
球磨郡水上村が熊日びぷれす広場にて「水の上の市場」を開催される際にも、黒棒が並びます。
熊本市内で販売されていることも知らず、二代目が黙々と作っておられる黒棒。
ぜひ、味わってみてください!
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