川がきれいな村の、山の話。五木村の林業に飛び込んだ新人が三人。清流と深緑の郷で紡ぐ暮らしと未来
川がきれいな熊本県五木村の、山の話。五木村の林業を支える「五木村林業研究クラブ」に3名の新人が加入。清流と豊かな山々に囲まれた秘境で、森を育て暮らしを紡ぐ人々の温かな情熱を取材しました。
このたびの熊本地震により被災された皆さまに、改めまして心よりお見舞い申し上げます。
地震発生直後から、被災地域の林研グループメンバーはそれぞれ、ご自宅や地域の復旧作業のお手伝いや、炊き出しなどの避難所支援など、さまざまな活動に取り組んでいます。
普段から山や高所で作業を行っている林業者だからこそ持っている技術や経験を活かして、今後も、被災された地域の復旧・復興に向けて、できる支援を続けてまいります。
氷川から県道25号を上がり、二本杉峠を越え、急峻な谷を跨ぐ大橋のむこうに五木村の中心地が見えてくる。壁のように目の前にそびえる深緑の山々に囲まれ、“雄大”というより“秘境”そのもの。この山々が濾過して生み出す清流「川辺川(かわべがわ)」はガラスのような透明度で、白滝公園は県内屈指の人気の川遊び場だ。
今年、五木村林業研究クラブ(以降、“五木林研”に略。)に3人もの新人メンバーが加わったそうで、インタビューに行ってまいりました。
道の駅子守唄の里五木からすぐ、ある平屋の民家の門を入ると、よく手入れされた緑鮮やかな芝生と色々な果樹や蜜蜂の巣箱があり、この庭の一角にある作業小屋に木看板で「五木林研」とある。ここが五木村林業研究クラブの拠点だ。
この日は、早朝から五木村村有林の立木調査が実施され、その後は懇親会。さすがのチームワークで、あっという間に大きなテントが広げられBBQが始まった。古株、いや失礼か。レジェンドメンバーが乾杯する脇で、新人御三方にお話を聞くことができた。
目次
五木村の林業に新たな風を吹き込む新人トリオ
理事として活躍する鴦山知弘さん
鴦山知弘(おしやまともひろ)さん(43)は、五木林研の理事に着任した期待の新人。コンビニの店長を長く勤めていた頃、夜勤続きで体重100キロの大男だったそう。5年前、くまもと林業大学校卒業後、五木村へUターンし、林業会社へ転職。森林に囲まれた山仕事で80キロまで自然減量して健康体に。
「高校入学時に村外へ出たので村のことを何も知らないままだった。大人になったいま、村の風土を肌で感じている。入会したばかりで、林研の通年行事さえ分かっていないが、これから実践的に把握していきたい。」と話す。
木材のブランド化を担う兼田良三さん
兼田良三(かねだりょうぞう)さん(52)は7年前から、五木村森林組合内にある「五木村山村活性化協議会」に勤めている。同協議会は五木村産の木材のブランド化に取り組む組織で、兼田さんは住宅建材の販売を担当している。
「林研では日常で接点のない世代の先輩方と交流できて楽しい。五木村の森林空間を活かし、子どもたちに五木の森に親しんでもらう活動をしたい。」と語ってくれた。
循環型の暮らしを営む生え抜きの中村誠さん
中村誠(なかむらまこと)さん(39)は、村内でも標高1000mにある子別峠(こべっとう)集落の出身。地元に留まり就職、結婚した生え抜きの五木っ子。薪ストーブ完備の「五木村林業従事者住宅」に住み、木を使い、山を育てる、循環型の生活を営み、子どもたちを育てている。
「なんし、人がおらん。少しでも五木村の林業に興味がある人は、ぜひ現地に来て、自分の目で見てほしい。」と熱く語る。
「山」で遊ぶ・親しむアイデアが広がる現場
「村の人口約1000人」「担い手不足」という言葉から、どうやったら五木村に人が増えるか、という話題に。
五木村の主要産業は林業。いま、美しい“川”を楽しめる村として人気なように、同じくらい、“山”で楽しめるアクティビティがある村として認知されると良い。子どもの頃に五木村で山遊びしたことで、大人になってからも縁がつながるかもしれない。
“地ごしらえ”——木を伐ったあと、次の苗を植える前に枝葉を片づける作業——で大量に出てくるカブトムシの幼虫を、夏休みにあさぎり町など村外の子どもたちに提供するイベントも、山に親しむきっかけとしていいかも。新しい企画がこんこんと湧き出てくる。
五木村の林業を支え続けるレジェンドメンバー
ところで、この作業小屋があるのは、木下村長のご自宅の庭だ。手入れの行き届いた芝生も果樹も蜜蜂の巣箱も、あの方の仕事だったのか、とあとから知った。
地域循環を生む「木守券」の仕組み
小屋を見学していると、額縁に入った表彰状が飾られているのを見つけた。「木の駅プロジェクト」の取り組みや、林業グループコンクール九州ブロック大会での発表が評価され、全国林業研究グループ連絡協議会から五木村林研に贈られたもの。その隅に差し込まれているのは、500円の「木守券(こもりけん)」。しかも発行No.000001、記念すべき一枚目だ。
間伐材や林地残材を「木の駅」に持ち込むと、1トンにつき6,000円相当の木守券と交換できる。村内の商店や道の駅、温泉施設で使える地域通貨だ。集めた木は、その温泉施設「五木温泉 夢唄」のバイオマスボイラーの燃料になる。
村長手作りの道具とツリークライミング
壁にはヤマメ釣り用のタモ網。木製で、なんと村長作。美術品のような美しさ。
ツリークライミングのギアを見ていると、庭先の梅の木で、同行していた私の息子に体験させてくれた。ロープワークがかっこいい。自力で登るから達成感があるそうで、イベントでもなかなか降りてこない子が多いのだとか。
五木林研は、中村健治さんが会長を務め、村長の木下丈二さん、五木村森林組合代表理事組合長の下内泰臣さんも名を連ねている。新緑祭りではツリークライミングやヤマメの釣り堀を出しているのだけど、熊本県内の林研グループでツリークライミングを提供しているのは、ここだけ。
村の基幹産業を背負う温かいコミュニティ
唯一の中堅層である土肥博司さんは、「会長と村長と組合長、この三方がこれまで引っ張ってきてくれた。僕はそれについてきた」と話す。
唯一、というのが引っかかった。レジェンドたちがいて、土肥さんがひとりいて、そして今年、三人が入った。
若手には気負わずにやってほしい、とレジェンドの皆さんは言う。でも実際、五木林研は、村の基幹産業を背負う人たちが集まるサロンのような場でもあって、これまでもこれからも、村内で頼りにされる存在であり続けるはず。
「なんし、人がおらん」。中村さんの言葉が、ずっと引っかかっている。
でも、この庭にいる人たちはとてもいい笑顔。乾杯するレジェンドがいて、その脇で新人が語り合い、梅の木には子どもがぶら下がっていた。この輪が、あと少し大きくなるといい。
「ぜひ、五木村に来て、自分の目で見て、肌で感じてもらいたい」
来るなら、毎年4月下旬の新緑祭り。山がいちばんきれいな頃に、とみなさんおっしゃってました。
📌 関連情報・イベントのお知らせ
【参考HP】
🌲 「五木のコト」
https://itsuki-no-koto.com/
🌲 「木のむら五木」
https://kinomura-itsuki.life/news/archives/1509
📣 今秋もイベント開催予定
この秋にも五木林研が参加するイベントが予定されています。
最新情報は公式Instagram @itsukimura.yakuba でぜひチェックしてみてください。







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