これを読んだら椎茸を見る目が変わる!?菊池の山の上のクヌギを活用した椎茸栽培の現場に突撃してきた!
煮てもよし、焼いてもよし、汁物に入れるのも、炊き込みご飯に入れるのもよしの万能食材・椎茸。その椎茸がいったいどのように作られているか、ご存知でしょうか。森づくりを行いながら、地域資源であるクヌギを活用して、美味しすぎる椎茸の栽培をされている菊池の若手林業家さんのところに行ってきました!

林業を愛し、林業を研究する熊本林業研究グループ(略して熊本林研)・情報発信担当のちえです。
突然ですが、読者の皆様は、椎茸(シイタケ)を買う時に気にされていることってありますか?
私は一つだけこだわっていることがあり、菌床椎茸ではなく、原木椎茸を選ぶようにしています。
なぜなら、自然の中で育ったものは、本当に風味が良くて美味しいから!
そんな美味しい原木椎茸の栽培を、林業とともに行われている生産者さんのところに行ってお話を伺ってきました。
これを読んだら、きっとあなたも、明日から椎茸を見る目が変わるはず…!
「ちょっと本当にここで大丈夫なの?」という山の中へ
今回は、菊池林業研究グループのメンバーさんで、「クヌギの森を活用しながら椎茸栽培を営む、若手の方がいらっしゃる」との情報を得て、県の担当者に取り次いでいただき、早速、指定された待ち合わせ場所へと向かうことに…。
熊本市内から菊池市中心部を抜け、竜門ダムを過ぎて、さらに山道を上っていきます。
進んでいくにつれて道幅も狭くなり、ガードレールもない場所があったりと、なかなか険しい山道に…。
果ては山の上から滝のように水が流れてきてるし、右手側は崖だしで、
「ちょ、ちょちょちょっと…本当に待ち合わせ場所、ここで合ってるよね…?」
と不安にならざるをえないほどの山の上へと向かい…
ようやく指定された場所へとたどり着きました!
そこにいらっしゃったのは、田中欣生さんと奥様の瑞希さん。
お二人ともキラキラまぶしいほど素敵で、雨の中、不安だった気持ちも、お二人にお会いして、パーッと太陽が出たような気分に…!
「もしかしてまだ20代の方…!?」と思っていたら、30代の子ども3人のパパママなのだそうで、衝撃!!!
「椎茸をたくさん食べたら、こんなに若くいられるんだろうか…」と真剣に考えてしまいました。
資源を無駄なく活かした椎茸づくりの現場
菊池には、竜門・旭志・水源という3つの林研グループがあり、田中さんは竜門林業研究グループの中のお一人。
所有している森の手入れを行う自伐林家の5代目で、椎茸栽培に取り組まれて14年というキャリアの持ち主です。
ちなみに熊本の林研の中では、菊池林研が一番歴史が古く、2018年で50周年を迎えたそうですよ!
椎茸栽培の方法はというと、
① 山のクヌギを伐採
②その原木に椎茸の駒を打ち
③植菌したものを組んで入れ木を行う
という流れ。そこから2年近くの年月を経て、ようやく椎茸の収獲ができます。
クヌギを使っての椎茸栽培は無駄がなく、伐採した木は原木に、細い枝は炭に、葉は入れ木の屋根に、とすべて資源として活用できます。
そして、朽ちたものは再び森の養分となって、次の木を育ててくれるそうで、実にサステナブルで無駄のないシステム!
また、杉や檜が、伐採時期まで50年、60年とかかるのに対し、クヌギは成長が早く、約15年で伐採時期を迎えるという特徴もあり、定期的に伐採しながら再生させることで、森林の新陳代謝を促してくれます。
また、上の写真のように、クヌギは木を伐採しても、枯れずに切り株からまた新しい芽が出て成長するので(萌芽更新)、伐採後にまた、苗木を植林する手間もかからないのです。
素晴らしい天然の資源・クヌギ
そんな生命力も成長力も素晴らしい、クヌギの特徴はほかにもたくさん!
【クヌギの特徴・メリット】
◎木材を焼いて木炭にできる
◎ドングリの実がたくさんなるので、猪などのエサ場になる
(里山におりてきて農業被害を与える猪を山に押し戻すことができる)
◎10~15年で木材として利用できる(成長スピードが速い)
◎落ち葉や朽ちたホダ木が土壌の栄養分となり、かつ保水層を形成することができる
◎根が地中深くまで伸びるので、土砂災害などの災害に強い森づくりができる
◎水資源の涵養が行える
◎二酸化炭素をたくさん吸収して成長するので、温暖化対策にも効果的
◎木材は建築用材として利用可能
実に素晴らしいですね!
こんなにもたくさんの恩恵をもたらしてくれる、環境維持や森づくりにも大切な存在・クヌギ。
田中さんは、そんなクヌギの特性を最大限活用し、山を守り、山の環境を維持しながら、椎茸栽培をされています。
美しいホダ場
実際に椎茸のホダ木が並ぶ、ホダ場を見せていただきました。
※ホダ木:シイタケを栽培するときに、種菌をつける原木。シイ・クリ・クヌギなどの幹を用いる。(出典:デジタル大辞泉)
なんと美しいホダ場!
青々と美しい杉の葉の下に、椎茸のホダ木が所狭しと並んでいます。
杉の木はきれいに枝打ちされていて、椎茸たちも緑色の屋根の下で、とっても気持ちよさそう!
枝打ちした杉の葉は、泥はね防止で地面に敷かれていて、まるでふかふかの緑の絨毯のよう!
杉の葉さえも無駄なく活用されており、理想的な循環型の世界がここにあります。
しかしまあ、「たった1本のホダ木に、こんなにも椎茸が出るのか!」と思うほど、圧倒的な椎茸の量!
丁寧に育てたいものには袋掛けがされており、愛情いっぱいで育てられています。
こちらでは、なんと8万本ものホダ木を管理されているらしく、最盛期には、朝3時起きで椎茸を収穫し、朝食後にまた収獲、夜は干し椎茸を作ったりの加工作業で、寝る時間もほぼないのだとか…。本当に頭が下がります。
実際に、今できている椎茸を収穫していただいてみました!
シンプルに塩だけふって、グリルで焼いて食べてみると…
「んまーーーーっ!ぷりっぷりで絶品!!!」
肉厚で風味がよく、歯ざわりも最高で、喜びで全身が震えるほどの美味しさです!
この椎茸、メインディッシュ級!
原木で育まれた椎茸は、食物繊維やビタミン、そして椎茸特有の栄養素であるエリタデニンなどが含まれており、体にも嬉しい食材です。
徹底した湿度管理と職人技で仕上げ
ホダ場を見せていただいたあとは、山を少し下って田中さんのご実家へ…。
干し椎茸を作るまでの過程も見せていただきました!
案内されたのは、「社長室」の札がある納屋の中。
こちらにドーン!と鎮座しているのが、椎茸を乾燥させる巨大な機械です。
中には、椎茸がぎっしり並べられたトレイがあり、この乾燥機を使って乾燥させること、なんと約36時間!
目視したり、分厚い軸の部分を触ってみたりして乾燥具合を確かめるそうですが、一番大事なのは音を聴くことなのだそう。
椎茸と椎茸が触れ合った時に、「カランカラン」と乾いた良い音が鳴り響くと、しっかり水分が飛んでいることがわかるそうです。
もはや匠の技!
乾燥させた椎茸の保管も、吹付断熱をした高気密・高断熱の場所に除湿器を入れ、徹底的に湿度管理をして保管されているそうで、通常の干し椎茸の保存期間が約1年であるのに対し、2~3年もつような乾燥度を目指されているとのこと。
「天白」と呼ばれる、美しい模様の入った高級干し椎茸もたくさんありました。
天白(てんぱく):傘の表面の花模様が白く割れ、模様がしっかりしているものを天白どんこと呼ぶ、どんこの中でも最高級品となる。(出典:しいたけSHOPうまみ堂)
田中さんは、県の「乾しいたけ品評会」で、農林水産大臣賞を7年連続8回受賞、林野庁長官賞を5年連続6回受賞されており、熊本が誇る椎茸生産者さんです!
森と生きるプロフェッショナル
ご両親と親子2代で、椎茸の生産を行いながら、森の手入れも行われている田中さんご家族。
代々受け継がれた40haの山に加え、ここ3年で10haほど森を買われ、「目標としては100haほどの森林を管理したい」と話される田中さんは、毎日、誇りをもって仕事に取り組まれています。
椎茸栽培に関しては、「人間にとって大切な食べ物を作っている」という意識をしっかり持って、量も生産しつつ、質の高い椎茸を作りたい!と、日夜学び、研究されながら、より良いものづくりに邁進されています。
菊池林研は活動も活発で、月に1回例会があり、それだけは忙しい時期でも、毎月欠かさずに出られるそうです。
講師を呼んでの勉強会や、他地域の林研グループとの交流、同じ椎茸生産者との情報交換など、林研で学ぶことも多く、良い学びと交流の場になっているのだとか。
お忙しい毎日でありながら、林業大学校生を受け入れたり、保育園児たちに椎茸の収獲体験をしてもらったりと、社会的な活動も積極的にされている田中さんファミリー。
広大な森を守りながら、美味しい椎茸も作られているプロフェッショナルでした!
田中さんたちの日常や美味しい椎茸の食べ方はInstagramで発信されていますので、ぜひご覧ください!
Instagram
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熊本県庁農林水産部森林局森林整備課林政企画普及班
(熊本県林業研究グループ連絡協議会事務局)
TEL:096-333-2438
菊池地区林業研究グループ連絡協議会
(熊本県県北広域本部農林水産部林務課)
TEL:0968-25-1039
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